企業が生成AIで情報漏えいを防ぐ7つの対策

企業の生成AI情報漏えい対策は、承認サービス、入力情報の区分、契約と設定を土台に、マスキング、技術制御、教育・ログ、事故対応を重ねます。注意喚起だけに頼らず、入力直前に判断できる仕組みにすることが要点です。

生成AIの情報漏えい対策を確認する企業チーム
生成AIの情報漏えい対策を確認する企業チーム(イメージ)

議事録を要約するために会話記録を貼る。メールを整えるために顧客名と取引内容を入力する。生成AIの情報漏えいは、悪意ある持ち出しだけでなく、こうした日常の操作から始まることがあります。一方で、入力した情報が直ちに公開されるとは限りません。実際のリスクは、サービスの契約、設定、保存、学習利用、アクセス権、扱う情報によって変わります。

この記事では、企業が生成AIを止めずに利用するための対策を、導入前、入力前、利用後の順に整理します。社内の入力基準と初動フローのたたき台を作れます。

利用前の事前準備:5項目

  1. 会社で認められたサービス・アカウントか。
  2. 入力する情報に利用許可があるか。
  3. 必要な部分だけに絞ったか。
  4. 保存・学習利用・外部連携の設定を確認したか。
  5. 出力を確認する人と、誤入力時の相談先を決めたか。

情報漏えいは入力・環境・連携の3経路で考える

対策の抜けを防ぐには、漏えい経路をプロンプト入力だけに限定しないことが大切です。

1つ目は、顧客情報、未公開資料、ソースコードなどをプロンプトや添付ファイルで送る「入力」です。2つ目は、個人アカウントや未承認サービス、共有端末、公開範囲を誤ったチャットなどの「利用環境」です。3つ目は、RAGや外部ストレージ、メール、業務システムとの接続を通じ、本来は閲覧できない情報が回答へ混ざる「連携」です。

「学習に使われない設定だから安全」と一項目だけで判断すると、保存ログ、再委託先、アクセス権、外部連携の確認が抜けます。IPA掲載の受講者作成手引書(2026年7月)では、入力・出力・ログ・学習データの扱い、契約、権限、フィルタリングを組み合わせて評価する考え方が示されています。

導入前に3つの境界を決める

最初にサービス、情報、契約の境界を決めると、現場の迷いを減らせます。

対策1.承認サービスと業務用アカウントを決める

会社が確認したサービス、プラン、アカウント種別を一覧にします。未承認AIを一律に禁止するときは、要約や文章作成に使える代替手段と、新しいサービスの申請窓口も用意します。IPA掲載の受講者作成手引書では、業務上の必要からシャドーAIが生まれる場合があるため、承認AIの提供、ルール、教育、技術的な検知を組み合わせる考え方が示されています。

対策2.入力情報を3区分する

情報は、少なくとも次の3区分で具体例を示します。

  • 入力可能 :自社サイトで公開済みの文章、一般公開された統計、社内で利用許可を得たテンプレート
  • 条件付き :匿名化した議事メモ、権限を限定した社内文書、承認済み環境で扱う業務データ
  • 原則入力不可または個別承認 :認証情報、秘密鍵、未公表の経営・技術情報、契約上の秘密、個人データ、取引先から預かった非公開情報

個人情報保護委員会は、個人情報の入力が利用目的の範囲内かを確認すること、本人同意なく個人データを入力する場合は、そのデータが回答以外の目的で扱われないか、機械学習に利用されないか等を確認するよう注意喚起しています。個別案件は自社の個人情報保護担当や専門家へ確認してください。

対策3.契約・規約・管理設定を確認する

契約前に、入力・出力・ログの利用目的、保存場所と期間、削除条件、学習や品質改善への利用、再委託、事故通知、管理者権限、監査ログを確認します。説明ページだけでなく、契約文書と管理画面の実設定を照合し、仕様変更を確認する担当も決めます。

入力前に情報量を減らし、技術で補う

人の注意だけに依存せず、送信前に情報を減らす工程と制御を置きます。

対策4.必要最小限にし、置き換える

全文を貼る前に、AIへ必要な部分だけを抜き出します。氏名は「顧客A」、会社名は「取引先B」、金額は幅や仮の数値へ置き換えます。ただし、部署、日付、案件内容の組み合わせから相手を推測できる場合があります。名前を消しただけで匿名化できたと判断せず、目的に不要な文脈も削ります。

対策5.画面警告・マスキング・送信制御を段階導入する

まず、入力欄の近くに禁止情報と相談先を表示します。次に、社員番号、カード番号など定型情報の検知・マスキングを試します。機密情報を扱う部門では、DLP(情報漏えいを防ぐための監視・制御)やAIゲートウェイによる送信検査も候補です。IPA掲載の受講者作成手引書では、文脈に埋め込まれた秘密や画像・PDF内の情報を技術だけで検知することには限界があるとされており、ルールと技術の併用が必要です。

利用後は記録・教育・初動を一つの運用にする

漏えいを防ぐ運用は、使った後の把握と事故時の行動まで決めて完成します。

対策6.利用実態とヒヤリ事例を記録する

部門、サービス、用途、入力データの区分、出力の利用先を把握します。ログは調査に役立ちますが、ログ自体の閲覧権限と保存期間も管理します。研修では「機密情報を入れない」だけでなく、顧客メール、会議メモ、提案書など、迷いやすい場面で判断する演習を行います。

対策7.誤入力時の初動を決める

誤入力に気づいたら、利用を止め、入力日時、サービス、アカウント、情報の種類、共有範囲を記録し、社内窓口へ報告します。担当部門は契約に基づく削除依頼、アカウントや共有設定の確認、影響範囲の調査、関係者への連絡要否を判断します。利用者が自己判断で履歴を消して終わらせると、調査に必要な情報まで失うため、社内のインシデント手順を優先します。

入力直前のチェックリストと今日やること

入力の直前に5項目を確認できれば、ルールを日々の行動へ移せます。

  • 会社が承認したサービスと業務用アカウントか
  • 入力する情報は「入力可能」または承認済みの「条件付き」か
  • 氏名、社名、金額、添付ファイルの不要部分を削ったか
  • 利用目的と、出力を見せる相手が決まっているか
  • 迷ったときに送信を止め、相談できる窓口が分かるか

いま社員が取引先メールを要約するとしたら、「どのサービスで、どこまで消して、誰に相談するか」を30秒で答えられるでしょうか。答えが分かれる箇所が、最初に整えるべきルールです。

今日やること

  1. 社内で使われている生成AIとアカウント種別を書き出す
  2. 入力情報を「可能・条件付き・原則不可」の3区分にする
  3. 誤入力時の連絡先を一つ決め、入力画面の近くに表示する

よくある質問と相談先

よくある疑問への回答と、社内整備を進めるための関連情報をまとめます。

Q1.法人向けの有料プランなら機密情報を入力できますか?

プラン名だけでは判断できません。入力データの利用目的、保存、削除、学習利用、再委託、管理機能を契約と設定で確認し、自社の情報区分に沿って許可範囲を決めます。

Q2.会社名や氏名を消せば安全ですか?

特定につながる情報は名称だけではありません。案件、部署、日付、金額などの組み合わせも確認し、目的に不要な文脈を削ります。機微性が高い場合は入力自体を避けるか、承認済みの専用環境を検討します。

Q3.誤って情報を入力したら、まず何をすべきですか?

追加操作を止め、サービス、時刻、アカウント、入力情報、共有状況を社内窓口へ報告します。履歴削除や提供者への連絡は、証跡と契約条件を確認しながら担当部門の指示で進めます。

情報管理と社員教育を整えたい方へ

社内ルールの全体像は企業の生成AI利用ガイドラインの作り方もご覧ください。基礎知識と実務での判断を社員教育へ組み込みたい方はAIスキルアップ研修、導入条件を整理したい方はお問い合わせからご相談いただけます。

参考にした一次情報